晴れ。

朝晩の寒暖差が激しい。

陽射しがあると初秋の頃のような温もりも感ずるが、陽が翳るととたんに冬の寒さがやってくる。

来月には69歳となる身にとっては、やはりこの気温差は体に応える。

やりきれない事件が報道された。

79歳息子、100歳の母親を殺害か「介護に疲れた」　老老介護の末に…

本当に胸が痛くなる想いだ。

私も、93歳の母の介護をしているので、ここまでひどい状況ではないけれども、とても他人事とは思えない。

この記事の母親は100歳で、20年間寝たきりだったという。

それを介護する息子は79歳。

厚生労働省の最新の調査によると、在宅介護をする人のうち、65歳以上が65歳以上を介護する老老介護の割合は年々増え続け、6割を超えて過去最多となっています。

やはりな、というのが実感だ。

幸い私の母は、足腰が不自由ではあるけれども、認知症の症状はなく、内臓系統も全く問題がないので、在宅介護でもそれほどの厳しさはない。

それでも、三度の食事や掃除・洗濯、そのほか身の回りのことは私が対処せざるを得ず、当然、私の私生活はかなり制限されている。

この事件の方、なにゆえにこのような状況で在宅介護だったのか。

施設への入所がなぜできなかったのか。

本人が寝たきりではデイケアサービスを受けることも容易ではなかろうから、在宅でいればどうしても訪問介護や入浴サービスに頼ざるを得ない。

その場合の金銭負担は相当なものと思料され、恐らく、この男性はぎりぎりまで自分で対処しようと頑張っておられたのだろう。

79歳という年齢では無理もないが、体の不調も抱えていたとのこと。

「自分の体調がよくなく、今後の母親の介護に対する不安があった」

全く尤もな話だ。

司直がどのような判断をするのかわからないが、状況を鑑みて、執行猶予付きなど、ある意味での温情を配した流れになるのかもしれない。

だが、もちろんそんなことで「解決」される話でもない。

介護施設への長期にわたる入所は、ほとんどの場合数年以上の待機が前提になるという。施設そのものの少なさも原因なのだろうが、恐らく介護職員が圧倒的に足りていないことの方により深刻な問題があるように思われる。

私の周囲でも、妹をはじめ介護施設で働いている人間が複数いるが、交代要員がいないために10連勤になったり宿直が続いたりという過酷な勤務状況で、求人を出してもなかなか応募がないと一様に嘆いていた。

その結果「介護は基本的に自宅で」という流れとなり、「自分の身内なのだから縁者が自宅で面倒を見て当然」という圧力がかかってくるわけだ。

世は少子高齢化を問題視し、声高に対策を叫んでいるが、将来の税収に寄与するであろう子供たちに手厚い対策を施すのが喫緊の課題であり、現在も将来も生産性を期待できない高齢者は「お荷物」という感覚が強いように思われるがどうだろうか。

そうした世の流れの中で、このような悲惨な事件も起こるべくして起こってしまう。

台湾有事だなどと、展開がきわめて不透明な妄想じみた話に血道をあげる前に、こうした一種の「棄民」ともいうべき現状を改善しようという全うな考えを、現在の議員連中や行政機関に求めるの無駄な努力なのだろうか。

なぜか、深沢七郎の楢山節考が頭をよぎってしまう。